「潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日」を読んで

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何回も中国当局に拘束されながら中国現地で体当たり取材をしていた記者の書籍ということもあり、現地取材しないとわからないことがたくさん書いてあったので書評で共有したいと思う。

<ハイテク戦争>
中国政府は米軍がイラク戦争時にサイバーアタックによってイラク軍側のPCをダウンさせて防衛を妨害させたということを知り、サイバー分野の強化を急ぎ、ここに多額に資金を注ぎ込んでいる。
ハッキングで捕まえた犯罪者でさえ、政府管轄のサイバー部門に入るなら恩赦するといった超法規的運用でさえ行っている。
筆者もその現場に潜入しようと入ったが、見つかって逃走せざるを得なかったとか。

<宇宙戦争>
中国政府はサイバー分野に続いて、宇宙での勢力拡大をもくろんでいる。
現在宇宙分野は米国が実質独占しており、特にGPSの威力は非常に大きい。
中国側も自国独自のGPSを手に入れることの重要性を理解しており、これを実現するために宇宙関連に多額の資金を注ぎ込んでいる。
米国側も中国側の宇宙テクノロジーの進化についてはかなり警戒しており、これが昨今トランプ大統領が宇宙軍の創設を掲げた一つの理由になっている。

<中国の北朝鮮に対する考え方>
中国は大使館と北朝鮮との国境沿いで商売を行っている商人から北朝鮮の情報を得ており、これらを活用して現在の北朝鮮の体制状態を確認しているようだ。
中国側も現在の北朝鮮体制が崩壊し、難民が大量に国境沿いに流入してくることや、北朝鮮が保有する核兵器が拡散されることを恐れている。
そのため北朝鮮は食糧やエネルギーをかなりの割合中国からの輸入に頼っているが、場合によっては中国側を恫喝して重要資源を入手するなどの行為も行っており、はっきりと主従関係が決まっているわけではなさそうだ。

<中国軍の実際の評価>
ただし、昨今兵については86世代と呼ばれる一人っ子政策が実施されてから、主に世帯の次男・3男が軍隊に入り国有企業に就職していくという流れだったのが断絶しはじめており、兵士の質は下がっているのではないかという話が出ている。
その証拠に軍隊生活が嫌になり脱走している兵士も増えているだとか。

ただし中国という国の安定性は軍が握っていることには変わりはなく、軍の経歴がなかった胡錦涛氏はここをコントロールしきれていなかった。
しかし、軍関連に経歴のある習近平氏がトップになってからここの取り締まり強化を行っており、特に胡錦涛時代に汚職やりたい放題だったトップを逮捕するなど明らかに粛正を強めている。

またもう一つ大きな問題としてアナログ系の分野が未だ脆弱というところにある。
戦闘機のエンジンは以前はロシア製を使っていたが、これを国内製に切り替えてテストを行ったが、上手く飛べていないことに加えて、明らかに燃料を半分にして飛ぶなど実戦的テストにもなっていないという評価もある。
また空母建設にもかなり執着しているが、米国でさえ空母建設に半世紀かけていることから、中国の空母建設は未だムダ金を垂れ流しているにすぎないのではないかとのこと。

<こうした現地取材は今後の中国では難しいのではないかという問題>
しかし、この記者もいまやこうした取材は今現在では不可能に近いだろうと述懐している。
理由は昨今のハイテク革命だ。
撮影技術の進化とAIの進化が監視カメラを経由しての個人の迅速な特定を可能にした。
6万人もの人が会場に集まる有名歌手グループのコンサートにて、どうしても見に行きたいと会場に来た指名手配犯を即座に判別し逮捕することができたという話もあり、外国人記者の行動を監視することなど非常に簡単だろう。
そうなると外国人記者が得たい情報を得るために機密情報がある場所に近づくだけで下手すると逮捕され処刑される可能性さえある。
しかし、これは中国人記者も同様であり、中国人記者からなどからは政治的に都合の悪い情報は決して流出することは今後ないだろう。
逆に中国人記者は外国人記者に期待している側面さえある。

また、昨今中国人旅行客が世界的に増加していることを考えれば、中国人が国外に行った際に口頭ベースで情報を引き渡すといった経由で増えていくかもしれない。
(ただしその場合は現地を確認することによるエビデンス確認が取れない)

<以下個人的私見>
今現在は中国は経済成長と軍の統制により共産党一党独裁ちが正当化されており、加えて昨今のこうした監視技術の進化でいよいよ政府に都合の悪い情報というのは表に出にくくなるだろう。
表に出てきたとしても情報発信源がすぐに特定され、継続的に情報を確保することが難しいように思える。
しかし、これは一方で現在の共産党一党独裁がどうしようもなくなったとき、人民の不満が爆発し、現状を変えるために暴力に訴える可能性は非常に高く、政治的ボラティリティの潜在的高さを払しょくすることは非常に難しいと思われる。

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